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「2025年の崖」を見据え開発体制を刷新したマツダ、ローコードのメリットをフルに生かしてレガシー移行のコストを大幅削減

1.5~5倍 開発生産性を向上
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マツダ株式会社(以下、マツダ)は、自社向けの業務システムを開発するための標準プラットフォームとして、ローコード開発環境である「OutSystems」を採用しました。「2025年の崖」を視野に入れたレガシーシステムの再構築や、新規アプリケーションの開発に導入し、大幅な開発生産性の向上を実現しています。

グローバルにビジネスを展開する自動車メーカー「マツダ」は、2020年に創立100周年を迎えました。大規模な変革期にある自動車業界において、時代の要請に応えられる個性的なクルマづくりへのチャレンジを続けています。

  • ビジネスプロセス管理
  • ケース管理
  • デジタルコアシステム
  • レガシーモダナイゼーション
  • モバイルアプリケーション
  • 業務効率の向上
  • Webアプリ/ポータル
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「当社ではOutSystemsを活用して、開発コストを抑えながら膨大なレガシーシステムの刷新を進めています。また、多様なアプリケーションのモバイル対応を通じて業務の効率化も実現しています」

品川誠一氏 マツダ株式会社 MDI&IT本部
課題

レガシーマイグレーションの取り組みで直面した
「開発生産性」と「新技術対応」の課題

マツダでは現在、「2025年の崖」と呼ばれる企業ITシステムの老朽化に伴うビジネス損失を回避し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速するためのIT基盤の構築を進めています。MDI&IT本部の品川誠一氏は「IT環境の再構築とITコストの構造改革を並行して進めていくにあたり、『開発生産性』と『新技術への対応』の面で多くの課題に直面していました」と話します。

同社では、過去10年にわたり、商用Javaフレームワークを自社で機能拡張したものを社内開発向けの「標準フレームワーク」として利用してきました。標準フレームワークを用いた開発は、一定の品質が確保でき、運用が統合的に行えるというメリットがある一方、開発生産性向上の面では頭打ちの状況にあったといいます。また、2025年を目標に、500を越えるレガシーシステムをマイグレーションするにあたり、従来のままの生産性では「100億を超える費用と大規模な人手が必要で、現実的ではない」ことが見えていたといいます。また、業務システムの再構築にあたっては、モバイルデバイスへの対応、モダンなユーザーインターフェイス(UI)による業務生産性の向上など、新たな業務要件への対応も必須と考えられました。

「OutSystemsを選択したポイントは、その機能性の高さです。ビジュアル設計や実装、開発生産性の高さ、既存システムとの高い接続性、モバイルアプリへの対応、そして洗練されたUIが決め手になりました」

品川誠一氏 マツダ株式会社 MDI&IT本部

要件に合致したOutSystemsの採用を決定
基幹系への適用を前提に綿密な準備

同社では、これらの課題を解決することを目的に、2016年ごろから新たなITフレームワークの構築を検討しはじめました。一般的な開発フレームワークに加え、コードジェネレーター系、ローコード系のツールなども含めて検討した結果、最終的に「OutSystems」の導入を決定しました。選択のポイントとして、品川氏は「設計や実装といった基本的な機能の優秀さ」「開発生産性の高さ」「モバイルアプリへの対応と洗練されたUI」「既存システムとの高い接続性」などを挙げます。

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マツダがOutSystemsを選択した理由:
  • 既存システムとの高い接続性
  • 開発生産性の高さ
  • モバイルアプリへの対応と洗練されたUI
ソリューション

ソフトウェア開発環境の整備とCoEを推進

マツダでは、OutSystemsの本格展開にあたり、技術面での環境整備に加えて、社内に「CoE(Center of Excellence)」と呼ばれる専門の推進チームを組織しました。開発プロジェクトをOutSystemsで進める際、CoEが手厚いサポートを行うことで、品質や生産性を高い水準で安定させることが目的です。

「マツダでは、最終的にOutSystemsを基幹システムへ適用することも視野に、環境整備を十分に行ってから大規模に展開する方法をとりました。既存システムとのインターフェイス認証やセキュリティなどの仕組みやルール、ソフトウェア部品を作り込み、どのようなプロジェクトで利用しても生産性や品質を平準化できるようにする環境づくりを、約1年かけて行いました」(品川氏)

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「CoEでは、1週間程度の短期間で画面と実際の処理を作成するPoC(概念実証)を実施し、直接ユーザーに見せることを行っています。新システムでの業務イメージをわかりやすく示すことが目的ですが、これがユーザーにも非常に好評です」

品川誠一氏 マツダ株式会社 MDI&IT本部
成果

旧基盤と同等の機能をローコードで実装可能に
開発生産性は1.5~5倍まで向上

開発のスピード感と、稼働するアプリケーションの完成度の高さが評価され、2019年後半以降、OutSystemsを採用するプロジェクト数は急伸しました。クルマの生産や流通に直接関係する基幹システムの一部や、社員が社内手続を行うための間接業務向けシステム、現場担当者向けの業務日報システムなど、多彩なアプリケーションがOutSystemsで作られ、稼働しているといいます。

「今、増えているのは旧来の.NET Frameworkや、ホスト向けにCOBOLで構築されたレガシーシステムをOutSystemsで再構築するパターンです。OutSystemsならではの洗練されたUIやモバイル対応などで、ユーザーの業務を効率化できており、現場の評価も高いですね」(品川氏)

「OutSystemsの導入で開発生産性は大きく向上しました。比較的単純なアプリでは5倍程度、複雑なアプリでは2倍程度、生産性が上がっています。また、品質的にも安定しており、OutSystems自体の不具合に起因する障害はまったくありません」

品川誠一氏 マツダ株式会社 MDI&IT本部

OutSystemsでの開発実績が増える中で、旧フレームワークの課題だった「開発生産性」も、大きく向上したことがわかりました。OutSystemsでは、旧来の開発手法と比べて、低難度アプリでは3~5倍、要件が複雑な高難度アプリでも1.5~2倍程度、生産性が上がっているといいます。開発期間も、従来の2分の1から3分の1に短縮されています。導入以来、OutSystems自体の不具合に起因する障害も起きておらず、安定性も高く評価しているといいます。

2025年を見据え開発リソースを強化

同社では、「2025年の崖」への対策として「内製化率の向上」に向けた取り組みも進めています。ITアウトソーシングの多用で失われた社内スキルの回復を意図したこの取り組みの推進にもOutSystemsは寄与しています。

「従来型のプログラミングで実装できる機能で、OutSystemsにできないことはほとんどありません。マツダでは、OutSystemsが提供している2週間の研修コースに加えて、自社開発向けのルールや作法の研修を数日のコースとして、新規開発者に受講させています。簡単なアプリケーションであれば、プログラミング未経験者でも1週間ほどあれば作れるようになるため、学習コストは十分に低いと感じます」(品川氏)

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ローコードを主要な開発手法に位置付け
レガシーマイグレーションを加速

同社では、不要になったシステムの廃止や既存システムの延命といった対応に、OutSystemsによる再構築、新規開発を組み合わせて、急ピッチでレガシーからの脱却を進めています。レガシーアプリケーションを再構築するコストについても、対象としたアプリケーションについては数分の1に大幅削減できる見込みだといいます。

OutSystemsの開発生産性と品質の高さは社内でも認知されてきており、MDI&IT本部では「今後は積極的にローコードで開発を進める」「IT本部員一人ひとりがローコードをはじめとした開発の技術を身につける」ことを基本方針に掲げているといいます。

今後の展望

品川氏は「今後も、OutSystemsをプラットフォームとして整えながら、膨大なレガシーシステムの刷新に活用して、全体の開発コストを下げていきたいですね。また、多様なアプリケーションのモバイル対応を通じて、業務の効率化にも寄与していきたいと考えています」と話します。

「マツダでは、ローコード開発を通常のプログラミングによる開発と並ぶ、システム開発の大きな柱として位置付けています。OutSystemsには、ソフトウェア開発の生産性とスピードを大きく向上させるツールとして今後も進化を続けてくれることを期待しています」(品川氏)