サービスとしてのインフラ(IaaS)とは

サービスとしてのインフラ(IaaS)は、重要かつ基本的なコンピューティング、ネットワーク、ストレージリソースを提供するクラウドコンピューティングフレームワークです。サービスとしてのソフトウェア(SaaS)、サービスとしてのプラットフォーム(PaaS)、サーバーレスコンピューティングと合わせて、基本的な4大クラウドサービスデリバリーモデルとして認識されています。

クラウドサービスモデル

サービスとしてのインフラを利用すると、リソースを俊敏、柔軟、動的に管理できます。こうしたプラットフォームは従量課金モデルを採用しています。そのため、クラウドコンテナやマイクロサービスといった最新テクノロジーを、先行設備投資を抑えつつ導入したいと考えている組織にとって魅力的な選択肢となります。

包括的な監視、負荷分散、クラスタリングといった広範なサービスと高度な機能を利用できることから、IaaSの人気は高まり続けています。Gartnerによると、2021年におけるIaaSの世界市場は2020年の643億ドルから41.4%成長し、909億ドルに達しています。

IaaSプラットフォームとは

サービスとしてのインフラとは、物理的/仮想的なコンピューティング、ネットワーク、ストレージリソースモジュールの集合体であり、一通りの機能を備えたIT基盤を提供します。IaaS環境はインターネットを介して運用されるサービスであり、ほぼ無制限に拡張することができます。特定のハードウェアやソフトウェアなどのリソースを調達する必要はありません。あらゆる機能がクラウドを通じて提供されます。

 サービスとしてのインフラ(IaaS)

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IaaS環境には主要なコンポーネントが4つあります。

  • 1. 物理データセンター: 通常、サービスベンダーは物理サーバーやその他の機器を多数備えた大規模データセンターを運用しています。これらのサーバーで仮想マシン(VM)をサポートし、抽象化レイヤーやクラウドリソースを作成します。
  • 2. コンピューティング: 仮想マシンはハイパーバイザを使用して、コンピューティング、メモリ、ストレージリソースを含む仮想インスタンスを作成します。通常、コンピューティングリソースはCPUやGPUといった様々な形式で提供されます。GPUは、高品質グラフィック処理やディープラーニングなどのタスク処理に重用されています。また、サービスベンダーはオートスケールや負荷分散などのサポート機能も提供します。
  • 3. ネットワーク: IaaSプラットフォームでは、ルーティングやスイッチングなどの処理で物理ハードウェアを利用せず、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)テクノロジーを採用しています。複数のクラウド環境や仮想プライベートクラウドにわたる様々なコンポーネントを、通常はAPIを使用して接続します。
  • 4. ストレージ: クラウドにストレージを移行することにより、データ関連のタスクを俊敏かつ柔軟に行えるようになります。拡張が容易になり、HTTP経由でデータにアクセスできます。IaaSにはブロックストレージ、ファイルストレージ、オブジェクトストレージが含まれています。これらはいずれも要件が大きく異なり、組織やそのストレージに対するアプローチに応じて様々なニーズに対応できます。

IaaSのメリット

IT組織でIaaSを利用すると、主に5つのメリットが得られます。

  • 1. 柔軟性とスピード
  • 2. 可用性
  • 3. 拡張性
  • 4. パフォーマンス
  • 5. 従量課金
  • 1. 柔軟性とスピード: リソースのプロビジョニングと導入を臨機応変に行うことができます。要件やビジネス条件の変化に合わせて、組織で動的に調整することが可能です。物理的な設備のプロビジョニングが不要であるため、多くの場合、製品やサービスを迅速に市場に投入できるようになります。
  • 2. 可用性: IaaSフレームワークは複数のタイムゾーンや地理的フットプリントにわたり、卓越した可用性とレジリエンスを提供します。単一障害点もありません。1つのコンポーネントがダウンしても他のリソースに引き継がれるため、サービスを引き続き利用できます。そのため、こうしたサービスを活用すると、リソースを特定の場所に集中させたり地理的に分散させたりする必要性が減るか、多くの場合なくなります。
  • 3. 拡張性: 他の形式のクラウドコンピューティングと同様、IaaSでもピーク期間中やビジネス要件の変化に応じたアプリケーション、ワークロード、その他のリソースのスケールアップ/スケールダウンプロセスを簡単に自動化できます。
  • 4. パフォーマンス: IaaSフレームワークは高速で効率性が優れているため、遅延が減り、パフォーマンスが向上します。また、このクラウドサービスモデルのベンダーは広範なフットプリントを保有していることが多いものです。これにより、2つのメリットが生まれます。アプリケーションやリソースをユーザーに近い場所に配置できるほか、局所的なパフォーマンスの問題の発生に対応することができるのです。
  • 5. 従量課金: クラウドの魅力の1つは基盤となる経済モデルです。大規模な先行経費支出やハードウェアの定期的なアップグレード/更新が不要なうえ、ビジネス条件が変化してもコンポーネントやシステム全体を総入れ替えする必要がありません。IaaSフレームワークを導入すれば、必要なだけリソースを使用して、その分の料金を支払うだけですみます。

IaaSが適するユースケース

IaaSのユースケースは多岐にわたります。IaaSはほぼあらゆるタイプのコンピューティング、ネットワーク、ストレージ要件をサポートします。

  • 一般的なエンタープライズデータウェアハウジング、ビッグデータ分析
  • ハイパフォーマンスコンピューティング
  • エンタープライズアプリケーション
  • Webホスティング、コンテンツ配信サービス
  • テスト、開発
  • データバックアップ、リカバリ

このように、サービスとしてのインフラは企業、政府機関、教育機関に適してる場合が多いと言えます。

また、高速開発や配布モデルのように大量のマイクロサービスが必要なテスト環境や状況においても力を発揮します。ITリソースの制限、オンプレミスアプリケーションの応答の遅さ、物理的キャパシティの制約によるパフォーマンスの低さに悩まされている組織にも、コスト面やその他の面でのメリットをもたらします。

これらのプラットフォームは使用量に基づく料金設定になっており、一般的に以下の4つのいずれかの方法で提供されています。

  • 1. サブスクリプション(通常は期間ベース)
  • 2. 一定のワークロードに基づく月単位の料金
  • 3. 特定のリソースの使用に注目した時間/分/秒単位の価格
  • 4. 利用していないリソースを割引提供する一時/スポット価格

IaaSを使用すべき組織

どのテクノロジープラットフォームでも同じですが、コンピューティング要件を確認し、IaaSモデルのメリットとデメリットを理解する必要があります。最適なシナリオでは、コストを削減し、パフォーマンスを向上させ、システムの応答性を改善することができます。柔軟性や拡張性の向上、事業継続性の強化、そして効果的に利用した場合にはイノベーションの加速も見込めます。

ベンダーと契約する前に、サービスレベル契約(SLA)の条項を正確に理解しておくことが重要です。サービスベンダーがシステムを最新で安全な状態に保つことを約束しており、潜在的な技術上/セキュリティ上の問題に対応できることを確認しておく必要もあります。インフラはベンダーが仮想環境で管理してくれますが、管理タスク、データセキュリティ、プライバシーの問題に関する対応は引き続き自社で行うことになります。

IaaSが様々な業界の組織にとって魅力的なテクノロジーフレームワークであることは確かです。従来のオンプレミスのITリソースの必要性を減らすだけでなく、なくすこともできます。

IaaSやその他のクラウドサービスモデルをはじめとするクラウドコンピューティングの詳細については、「クラウドアプリケーション開発ガイド」をご覧ください。