トータルエクスペリエンス(TX)とは

一貫したトータルエクスペリエンス(TX)戦略を策定することは、あらゆるビジネスの成功に不可欠です。TXとは、サイロを解消して、すべてのエクスペリエンスを相互関連、相互依存するものとして扱う組織の能力を指します。

Gartnerの予測によると、TX戦略を巧みに実施できる組織は、2024年までに満足度メトリックで競合他社を25%上回るようになるそうです。しかし、優れたTXを実現するのは簡単なことではありません。これまでサイロ化した状態で作業していた多様なグループやチームが高度に協調して作業することを求められるからです。

トータルエクスペリエンスとは

トータルエクスペリエンスの目的は、顧客や従業員全員にあらゆる面で優れたエクスペリエンスを提供することです。TX戦略の基本的な考え方は「人間中心」です。顧客、従業員、ユーザー、パートナーなど、何らかの形でビジネスに関与または従事しているすべての人に対して、優れたエクスペリエンスを生み出すための全体的アプローチなのです。

すべてのタッチポイントはつながっているため、TXは極めて重要です。たとえば、従業員が顧客の関連データをすぐに取得できない場合、その会社に対する顧客のエクスペリエンスに悪影響が及ぶことになります。Webページやアプリで製品やサービスに関する情報になかなかたどり着けなかった顧客は、ストレスを感じてその企業から離れていってしまうかもしれません。

トータルエクスペリエンスの要素

効果的なTXフレームワークの主な要素は以下のとおりです。

  • カスタマーエクスペリエンス(CX)顧客や見込み客に関する側面(要望、ニーズ、期待、信念、感情、経歴など)の把握。CXで大切なのは、顧客が自分の実行したいタスクをどう実行するかを自らで決定できるようにすることです。
  • 従業員エクスペリエンス(EX)。従業員の満足度、定着率、スキルレベル、生産性の把握。EXで大切なのは、従業員がより効果的に業務を遂行できるようにすることです。
  • ユーザーエクスペリエンス(UX)。ユーザーのニーズ、不満、ユーザージャーニー、ユーザーがタスクの実行に要する労力の把握。UXで大切なのは、デジタルアプリを導入することです。
  • マルチエクスペリエンス(MX)各ペルソナにとって適切なチャネルと適切なインタラクションタイプの把握。MXで大切なのは、デジタルタッチポイントをつなぐことです。

TX戦略の策定とは、これら4つの要素を調整することです。また、これらの要素を実現するテクノロジーと、目指すビジネス成果に4つの側面がどの程度貢献しているかを追跡するうえでの鍵となる実績評価指標の設定も欠かせません。

 

トータルエクスペリエンス戦略の4つの要素

TX戦略の成功に不可欠な要因は以下のとおりです。

  • 卓越性の重視: 摩擦を取り除き、顧客、従業員、パートナー、ユーザーがビジネスと関わりやすくなるようにします。これは、収益やブランドロイヤルティを高める鍵となります。
  • 全タッチポイントでの一貫性: モバイルアプリ、Web、拡張現実/仮想現実(AR/VR)、ウェアラブルでUXに一貫性を持たせます。プロセスとインターフェイスがそろっていると、顧客と従業員の満足度が向上します。
  • 信頼性と透明性の向上: ペルソナがタスクを遂行するためのエンドツーエンドジャーニーを検討し、各ステップを可視化します。これにより、注文の品がいつ届くのか、カスタマーサポート担当者がいつ問題に対処してくれるのか、製品がいつ修理されるのかなどといった事柄について、顧客や従業員が誤解をしたり、失望したりしなくてすむようになります。信頼を得ることこそ、長い目で見ると顧客ロイヤルティを高めるうえで最も重要な側面なのです。

トータルエクスペリエンスの具体例

たとえば、旅行会社のWebサイトでフランス旅行について調べ始め、スマートテレビのストリーミングアプリで動画を視聴したある顧客が、スマートフォンに切り替えた後で質問を思いついたとします。

その場合、顧客担当者が介入して重要な質問に答えることができます。それだけではありません。複雑な予約を手伝ったり、特典ポイントや割引用のプロモーションコードの所有状況を知らせたりすることもできます。担当者側で予約を完了させるか、サポートの電話をつないだまま顧客に処理を完了してもらうかも自由に選べます。

顧客の使用するチャネル、テクノロジー、デバイスの種類や、従業員のサポートの有無を問わず、ジャーニーのどの時点でも顧客の旅行の好み、既存の予約、進行状況を見ることができます。つまり、全員が同じ情報を持っているため、引き継ぎした後でも一から説明を始める必要はありません。最終的に、休暇の計画と予約(フライト、ホテル、ツアーなど)が一体化されシームレスなエクスペリエンスになります。

これは、顧客が保険を契約する場合でも、ピザを注文する場合でも、コンピュータを修理に出す場合でも同じです。顧客も従業員も、任意のタッチポイントで簡単かつ便利な方法でタスクを遂行したいと考えています。そして、そのようになれば誰もがメリットを得られるのです。

トータルエクスペリエンスの実現

テクノロジーやプロセスが複雑化し、タッチポイントの数が増えるにつれて、顧客、見込み客、従業員、パートナーなど、ビジネスに携わる誰もがシンプルでわかりやすいと感じるエクスペリエンスを実現する方法を見出すことが不可欠になります。

組織がデジタルトランスフォーメーションの取り組みをさらに進めていくうえで、TXは重要な役割を果たします。Gartnerは「12 Top Strategic Technology Trends for 2022」のひとつとしてトータルエクスペリエンスを選びました。このレポートでは、2026年までに大企業の60%がTXを利用してビジネスモデルを変革し、「世界に通用する」成果を達成するとされています。

あらゆるタッチポイントでシームレスなUXを備えた、顧客と従業員向けのシンプルかつ直感的なアプリを開発できる高性能ローコードプラットフォームを、TX戦略の形成に活用することができます。