ローコードのメリット

ローコードのメリットは、専門的なアプリケーションにローコードフレームワークやマルチエクスペリエンス開発用のツールのほか、自動化、連携、影響監視などの機能を組み込める点です。

ローコードのメリットを判断するうえでの基準

現在、300以上のベンダーやプラットフォームが様々なタイプのローコードを提供しています。ただし、こうしたローコードツールの大半は、ビジネス上の特定の問題を解決しようとしている個人や少人数のグループ向けのノーコードツールです。

そのため、ローコードのメリットを格付けするにあたり、エンタープライズアプリケーションを提供していないソフトウェアベンダーは除外しました。それでも、エンタープライズローコード開発プラットフォームは企業で想定されるほぼすべてのユースケースに適用できるため、上位5つのメリットを選定することは簡単ではありませんでした。実際に、ある大手アナリスト企業は、どのプラットフォームが最も広範なローコード機能とメリットを提供しているかを判断するにあたり、190個以上の基準に照らしてローコードプラットフォームベンダーを評価しています。

ローコードの上位5つの機能とそのメリット

スピード
俊敏性
マルチエクスペリエンス開発の簡素化
イノベーションの大衆化
シャドーITの防止

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スピード

ローコード開発の最大のメリットは、新しいソフトウェアやアプリケーションの開発を加速させる機能です。ForresterのJohn Rymer氏は、「Why You Need To Know About Low-Code, Even If You’re Not Responsible for Software Delivery(ソフトウェアデリバリーの担当者ではない人もローコードを理解しておくべき理由」と題するブログ記事で、ローコードによって「ソフトウェアの開発スピードが従来の手法の10倍になる」可能性があると書いています。では、アプリ開発の大幅な高速化を可能にするローコードの機能を見ていきましょう。

ローコードを使用すると、複雑なコードや構文を何千行も記述することなく、最新のユーザーインターフェイス、連携、データ、ロジックを備えた完全なアプリケーションをすばやく視覚的に開発できます。アプリケーションをより速く、最小限のハンドコーディングで開発できるのが特長です。この記事では、それ以外のローコードのメリットもご紹介します。

ドラッグ&ドロップ機能、ビルド済みのユーザーインターフェイス、ビジネスプロセスのモデル、ロジック、データモデルにより、フルスタックのクロスプラットフォームアプリを迅速に開発できます。

簡単に実装できるAPIやコネクタで、開発者が使用しているサードパーティのツールと連携できるため、習得に時間をかけずにすみます。

ワンクリックでアプリケーションをデリバリーすることで、自動的にすべての変更が追跡され、データベーススクリプトやデプロイプロセスが処理されるため、時間のかかるデプロイや運用のプロセスを大幅に減らせます。

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俊敏性

ビジネスに俊敏性があると、企業はビジネス上の問題を解決する革新的なデジタルソリューションを使用して、市場の変化に適応したり新たな市場機会を創出したりすることができます。ローコードにより、市場の急激な変化、そして消費者や顧客の新たなニーズに伴って発生するこれまでにないデジタルイニシアチブへの対応が可能になります。たとえば、レガシーシステムと連携するクラウドアプリケーションを開発できるため、顧客ニーズの変化に応えやすくなります。また、より多くのプラットフォームにアプリケーションを実装できるため、顧客が選べるチャネルも多くなります。ローコードでは、マイクロサービスやコンテナといった俊敏性に貢献するテクノロジーも利用できます。

これをすべて従来のコーディングで実行した場合、IT部門やビジネス部門の俊敏性がどうなってしまうかは想像に難くありません。

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マルチエクスペリエンス開発の簡素化

前述のとおり、ローコードは顧客が選ぶチャネルでやりとりできるようにするための機能を備えています。独立系アナリスト企業のGartnerが「マルチエクスペリエンス」と呼ぶこの機能は、ローコードがもたらす大きなメリットのひとつです。ローコードを使用すると、リーダー企業のエクスペリエンスに匹敵する優れたオムニチャネルカスタマーエクスペリエンスを、莫大な予算をかけることも開発チームの編成にコストをかけることもなく開発することができます。それだけではありません。

マルチエクスペリエンス開発では、ビルド済みのテンプレート、自動リファクタリング、簡単なチャットボットなどを利用できるため、どのチャネルでも一貫した操作性をユーザーに提供できます。手順を改めて覚えたり、同じ手順を繰り返したりすることなく、エンゲージメントやインタラクションの方式を切り替えることができるのです。ローコードはプロセスを加速し、あらゆるユーザーに常に最適なエクスペリエンスを提供するための複雑な作業を簡略化します。

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イノベーションの大衆化

2020年に公開した「The Speed of Change」レポートで、フルスタック開発者の採用の難しさについてITリーダーを対象に質問したところ、大多数が「難しい/とても難しい」と回答しました。これは、デジタルトランスフォーメーションの目標達成に欠かせない熟練開発者や専門開発者の雇用にいまだ苦慮している組織が多いという実情の現れです。その主な原因は、財源不足、そしてGoogleやAmazonのような文化的魅力の欠如にあります。

ローコードの持ち味であるスピードと開発のシンプルさにより、経験の浅い初級開発者やテクノロジー愛好家でもフルスタック開発者のようにアプリを開発することが可能になります。また、スキルを有する開発者は、作業効率が高まることで、複雑で特殊なプログラミングに注力できるようになります。その結果、企業の規模にかかわらず、既存のリソースを最大限に活用し、ビジネスの競争力を維持するために必要なソリューションを開発できるようになるのです。

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シャドーITの防止

ローコードはシャドーITという問題も解決します。シャドーITとは、IT部門のあずかり知らぬところで、許可を得ていないビジネスユーザーが日常業務用のアプリを開発することを表す言葉です。「イノベーションの大衆化」をうたうローコードは、こうした陰での開発をなくす手段となります。ローコードを使用すると、ビジネスユーザーであってもシンプルなアプリを開発でき、ベストプラクティスに従ってアプリケーション開発中にありがちな問題を回避することができます。