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SAP S/4HANAのフロントエンドをOutSystemsで構築内製のアジャイル開発により約半年でのリリースを実現組織のDXを促すコアテクノロジーとして高く評価

3〜5倍の生産性 OutSystemsとアジャイル開発の組み合わせ
約6ヶ月 1週間単位でのスプリントを設定し、短期間での開発を実現
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富士通グループのRidgelinez株式会社(以下、Ridgelinez)では、「SAP S/4HANA」による基幹システムの新規構築にあたって、フロントエンドの業務ポータルおよびワークフローシステムを、ローコード開発プラットフォームである「OutSystems」を用いて構築した。開発は、業務ユーザーを含むチームによる内製のアジャイル手法によって行われ、約6カ月という短期間でのリリースを実現。引き続き、改善と新規機能の開発が続けられており、組織にも、DX推進に寄与するポジティブな変化が生まれているという。

  • ビジネスプロセス管理
  • デジタルコアシステム
  • 業務効率の向上
  • SAPの拡張
  • Webアプリ/ポータル
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「パッケージのメリットを最大限に引き出すため、SAP S/4HANA自体については一切アドオン開発を行わず、業務を標準機能に合わせていく方針が決まっていました。その上で、パッケージ単体では機能が不足しているワークフローに関わる部分については、何らかのツールを使って別途に開発する必要があると判断。そこに、OutSystemsを活用したいと考えていたのです」

島田 裕士 氏 Ridgelinez株式会社
Management Control ディレクター
課題

企業にとって長期間のチャレンジとなる
“DXジャーニー”の全体に寄り添うため
富士通が設立した新会社「Ridgelinez」

企業が最新のデジタル技術を活用して、市場に新たな価値を生みだしていく取り組みは「デジタルトランスフォーメーション」(DX)と呼ばれており、その実現は、今や多くの企業にとって重要な経営課題のひとつだ。これまで、企業のIT活用やビジネスのデジタル化を支援してきたITベンダー、システムインテグレーターも、顧客のDX実現を支援できる体制や組織の構築を急ピッチで進めている。

2020年1月設立の「Ridgelinez」(リッジラインズ)は、企業のDXへ向けた取り組みを包括的に支援することを目的に、富士通が立ち上げた新会社だ。

企業のDXには、戦略の立案から、新たな業務プロセスのデザイン、新技術を取り入れたプロトタイプ実装など、さまざまなフェーズがある。また、これらは「一度やって終わり」という性質のものではなく、フィードバックに基づいて継続的に改善され続ける必要がある。その過程は長期の旅程になぞらえて“DXジャーニー”などと呼ばれることもある。

Ridgelinezが目指すのは、顧客の“DXジャーニー”全体に寄り添ったサポート体制の提供だ。同社でManagement Controlのディレクターを務める島田裕士氏は「富士通グループ自身も、その“DXジャーニー”の途中にあります。旧来のSIビジネスとは大きく異なる、お客様のDX支援を実現するために、グループ企業だけでなく社外からもタレントを集め、完全にベンダー中立な立場でDXビジネスを進められる体制を作る意味でも、新会社を組織する必要がありました」と話す。

Ridgelinezでは、従業員が利用する各種業務アプリケーションの開発ツールとして「OutSystems」を採用している。また、自社内で蓄積した、OutSystemsによるローコード、アジャイル開発のノウハウを、顧客のDX支援にも活用していくことを視野に入れているという。

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OutSystemsを選択した理由
  • 専門開発者の生産性向上
  • 開発の加速と俊敏性の向上
  • コアシステムの開発
ソリューション

新たに構築する基幹システムに
足りない機能を迅速に補完するため
生産性と自由度が高いOutSystemsを採用

RidgelinezがOutSystemsの導入を検討したきっかけは、基幹システムの新規構築だった。同社では、2021年4月の新年度に合わせて稼働を開始できるよう「SAP S/4HANA」の導入を進め、並行して各種の周辺システムの開発も進めていた。島田氏自身は、そのプロジェクトの進行中にRidgelinezへ転職。当初はコーポレート所属として業務環境の構築に携わった。

OutSystemsの採用については、プリンシパルを務める小野敦史氏の判断による部分が大きかったという。小野氏は、以前も島田氏と同じ会社に所属していたことがあり、島田氏よりも先にRidgelinezに参画していた。小野氏は以前よりローコード開発ツールの市場に着目し、リサーチを続けていたという。

「近年、ローコード開発環境の市場は活性化しており、導入にあたっては複数の製品を比較検討しました。OutSystemsについては、ローコードツールでありながら他製品と比較して開発の自由度が高いこと、市場での評価が高いこと、日本でのサポート体制が充実していることといった要素を総合的に判断して、導入を決定しました」

島田 裕士 氏 Ridgelinez株式会社
Management Control ディレクター

OutSystemsによるワークフロー開発は、島田氏をリーダーに進められた。当初は、ワークフローのみの開発を予定していたが、基幹システムの本格稼働を半年後に控えた2020年10月ごろ、状況に変化が生じる。当初はSAPの標準機能で開発していた業務関連のポータルについても、OutSystemsでの開発に切り替えることになったのだ。

「当初、ポータルの開発はSAPで行っていたのですが、作業を進めるうちにSAP標準の開発環境の生産性が低いことが問題になりました。また、機能要件も不足していました。例えば当社では、会計処理にあたって進行基準計算を行っているのですが、標準機能では、そのための要件も満たすことが難しいことが分かりました。急きょ、ワークフロー開発に使っていたOutSystemsを使って、業務ポータル全体についても開発を進めていくことになりました」(島田氏)

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「現在では、基幹業務に関わる部分だけでなく、業務改善を目的とした新たなアプリケーションもOutSystemsで作っています。例えば、中途入社の従業員と人事部門間のオンボーディングプロセスを管理するためのシステムなども短期間で実現できました」

島田 裕士 氏 Ridgelinez株式会社
Management Control ディレクター
結果

業務ユーザーを加えたアジャイル開発で
OutSystemsの圧倒的なメリットを実感
迅速な開発が組織自体の変化も加速

Ridgelinezにおける、業務ワークフローおよびポータルの開発は、OutSystemsを使ってアジャイル的な手法で進められることになった。島田氏をリードとして、実際の開発作業を行うテクノロジー部門のメンバー、業務コンサルタント、現場のユーザーなどを加えてチームを組織。約1週間の「スプリント」を設定し、短期間で開発、レビュー、修正を繰り返しながら、完成に近づけていくという進め方だ。

半年の開発期間で、業務に関わるさまざまな機能をOutSystemsで実現していくにあたり、作業の中で感じた最大のメリットは「圧倒的なスピード感」だったと島田氏は振り返る。

「OutSystems自体の使い方に習熟しながら、実業務に利用するアプリケーションを作らなければならない状況でしたが、スプリント単位で実際に動く成果物を出しながら開発を進められるスピード感は圧倒的でした。アジャイル開発との相性も抜群で、こうしたツールがあってこそ、アジャイル開発のメリットがフルに引き出せるのではないかと感じました」(島田氏)

同プロジェクトでは、基幹システムが稼働を開始する2021年4月中旬までに、受発注ワークフロー、商談管理、プロジェクトに関するコード発番、収支管理の一部といった、稼働時までに最低限必要とされていたアプリケーション群のリリースを完了。稼働開始後も、業務ユーザーからのフィードバックを受けつつ、改善や追加開発を続けているという。

「今回の取り組みを通じ、パッケージソフトの不足部分を補いたいと考える企業にとって、OutSystemsが効果的なツールだということを実感しました。また、OutSystemsを使ったアジャイル開発で、われわれの組織に起こった“変革”の体験についても、お客様に展開していくことができるだろうと考えています。Ridgelinezは、製品導入やシステム開発だけではなく、組織のあり方や企業文化の変革も含めて、お客様のDXジャーニーを支援できる企業となることを目指しています。パートナーとしてのOutSystemsとも協力しながら、そうした動きを、さらに加速させていきたいですね」

島田 裕士 氏 Ridgelinez株式会社
Management Control ディレクター

OutSystemsの生産性については、実際に開発作業を担当したテクノロジーチームも高く評価している。

「開発担当者からは、データベースの自動生成機能、非同期処理の実装対応、タイマープロセスなどの作成が非常にやりやすかったと聞いています。アジャイルを実践する上では、ビジュアル環境による開発作業の効率化に加えて、ペアプログラミングのしやすさといった点も高評価でした。担当者の印象では、従来のツールと手法で開発を進めた場合と比べて、OutSystemsとアジャイルを組み合わせた場合の生産性は全体で3~5倍ほど高く感じたそうです」(島田氏)

また、プロジェクト全体をリードしてきた立場から、島田氏は「社内の意識変革にも、OutSystemsは大きく寄与した」と評価する。

「今回、OutSystemsによるアジャイル開発を取り入れ、業務ユーザーにもチームへ参加してもらったことで、DX推進に向けた組織風土にも、ポジティブな変化があったと感じています。実際に動くものを短期間で作り、それを見ながら議論を進めることで、チームメンバーの意識だけでなく、言動も変わっていくのを感じました。人の意識と行動の両方が変わらなければ、組織は本質的には変われません。例えば、私の専門はコンサルティングですが、その立場からも“きれいなプレゼン資料を作ることより、実際に動くものを作って、見せて、改善する”ことが、組織の変化を加速させることを再認識しました。Ridgelinez自身のDX実現に向けた組織作りにも、OutSystemsは貢献してくれたと感じています」(島田氏)

変化へ対応できる開発ツールの選択肢として
OutSystemsのスキルとノウハウを引き続き蓄積
DXの社内事例として顧客への展開も視野に

Ridgelinezは、今後も市場の状況や事業の成長に応じて、さまざまな変化を経験していくことになる。同社では、OutSystemsをコアテクノロジーのひとつとして活用しながら、組織の変革を続けていきたいと話している。

「Ridgelinezは、設立2年ほどのまだ新しい会社です。今後、組織の拡大が計画されている中で、業務のインフラにあたるシステムについても、迅速に整備していかなければなりません。当社としては、市場で評価が定まった、UIに優れるSaaSが存在しないようなニッチな業務ニーズに対して、自社で迅速にアプリを作り、効率化するためのツールとして、OutSystemsを引き続き活用していきたいと考えています」(島田氏)

加えて、同社が支援する顧客に対しても、Ridgelinez自身がOutSystemsを通じて実践しているDXのプロセスやノウハウを展開していくこと視野に入れているという。

登録商標について

SAP、SAP S/4HANA、および本文書に記載されたその他のSAP製品、サービス、ならびにそれぞれのロゴは、ドイツおよびその他の国々におけるSAP SEの商標または登録商標です。

【企業情報】

Ridgelinez株式会社
本社:東京都千代田区丸の内二丁目6番1号 丸の内パークビルディング
設立:2020年1月15日
資本金:1億円
従業員数:357名 (2021年12月1日現在)

【企業プロフィール】

総合ITベンダーの富士通が、顧客企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援を本格化することを目的に、2020年に設立した完全子会社。富士通本体とは異なる独自の企業文化や社内制度のもと、コンサルティングから最新テクノロジーの活用に至るまで、顧客の「DXジャーニー」にワンストップで寄り添うサービスの提供を目指す。顧客のデジタル変革に寄与するソリューションを、ベンダーニュートラルでアレンジできることが特長のひとつ。

URL: https://www.ridgelinez.com