

世界的に急成長しているHermesのeコマースビジネスは、OutSystemsを使用して2,000万もの小包を追跡
Hermesでは、2つのOutSystemsアプリを使用してすべての小包とトラックを完全に追跡することができ、毎年2,000万もの国際小包の配送を行っています。
Ingo Paas氏がGreen Cargoの新CIOに就任した当時、同社はメインフレームの物流システムとSAP ERPを総入れ替えしようとしていました。これには莫大なコストがかかるうえ、デジタルイノベーションが7年間も停滞することになります。そこでPaas氏は対案を提示しました。それが、レガシーシステムのデータにアクセスする新たな方法を探し、デジタルイノベーションをクラウドに移行するという案です。
Green Cargoは、Microsoft AzureとOutSystemsを組み合わせることで、イノベーションの力を再認識しました。そして社内開発チームを拡大して最大10倍の速さでデジタルイノベーションを実現することに成功しました。
「アーキテクチャワークショップは当社の意思決定に大きな影響を与えました。この先長年にわたり当社のデジタル化を支えられる拡張性の高いマイクロサービス指向のアーキテクチャをOutSystemsで構築する方法を学ぶことができたのです」
Green Cargoは、スカンジナビアとヨーロッパに効率的かつ持続可能な鉄道物流を提供しています。同社はスウェーデンの国有企業であり、2019年の貨物輸送量は105億トンキロにのぼっています。特筆すべきなのが、同社が保有する400本もの電車が環境に及ぼす影響は、道路輸送の300分の1だという点です。
環境への貢献という観点では世界をリードするGreen Cargoですが、2019年にはレガシーITシステムが大きな足かせとなりデジタルイノベーションで遅れを喫していました。新しい経営陣は、2019年9月にIngo Paas氏をCIOに任命しました。同氏の任務はデジタルイノベーションのてこ入れでした。
「私がGreen Cargoに入社した当時、IT部門にはイノベーションに向けた戦略も能力もなく、ほぼ外部委託に頼りきりの状態でした」Green CargoのCIOであるPaas氏はそう振り返ります。「長い間何も開発していなかったので、ビジネス部門からの信頼もありませんでした」。
「この会社をデジタル化するには、イノベーションと開発を内製化し、ビジネス部門とIT部門の協力体制を構築する必要がありました。それを可能にする俊敏性を提供してくれたのがOutSystemsです」
過去15年間にわたり、同社はメインフレームのレガシー物流システムと、大幅にカスタマイズされているSAP ERP実装をリプレースしようと議論を重ねてきました。
「これら2つの大規模なシステムのリプレースで、何年もの間IT部門は頭がいっぱいでした」とPaas氏は言います。「しかし、なぜリプレースが必要なのか尋ねたところ、誰もうまく答えられませんでした。リプレースには数年かかるでしょう。その間、ビジネス上の利益は得られず、デジタルイノベーションも停滞してしまいます。個人的には、いつまでもITを外部委託し続けることをやめ、社内でイノベーションを行えるようにして、運命の手綱を握り直すことのほうが優先度が高いように感じられました」。
Paas氏は就任わずか7週間にして、より優れた戦略があると同じ役員たちを納得させました。「持続可能な価値主導型イノベーションを加速する手段が必要だと説明しました」とPaas氏は言います。「たったスライド6枚のプレゼンテーションで、レガシーシステムのリプレース計画は過去のもとなりました」。
Paas氏の持続可能なイノベーション計画には、4つのデジタルアクセラレータが含まれていました。
次にPaas氏が取り組んだのが、テクノロジーパートナーの選定と開発チームの採用でした。
取締役会からGreen Cargoの新たなIT戦略についての承認が得られたため、Paas氏のチームはデジタルアクセラレータの構築を開始しました。「コミュニケーションの調整や連携には、Microsoft Azureプラットフォームを選択しました。また、Lookerでのデータ分析にはGoogle Cloud Platformを選択しました」とPaas氏は説明します。
プラットフォームやアプリのポートフォリオ戦略をサポートするためにはOutSystemsを選択しましたが、これには慎重な吟味を重ねました。「ある部門が個別の開発要件に対応するためにOutSystemsを検討していると聞きました」Paas氏はそう言います。「しかし、たった1つのアプリを開発するために新しい開発プラットフォームを導入したいとは思いませんでした。候補とするためには、OutSystemsが戦略的なプラットフォーム要件にどの程度適合するか、そしてアプリポートフォリオ全体の開発や長期的な保守に対応できるかを確認する必要がありました」。
そこで、OutSystemsテクニカルサクセスマネージャーによるアーキテクチャワークショップなどを活用し、迅速な評価を行いました。「OutSystemsプラットフォームのスピードと使いやすさに非常に感銘を受けました」とPaas氏は語ります。「しかし重要なのは、OutSystemsが社内のソフトウェアファクトリーに対応できるかどうかを確認することでした。1つのアプリをすばやく開発できるだけでは仕方ありません。複数の開発者がいて多数のアプリケーションがある場合に、どう拡張できるかを知りたかったのです」。
最終的にGreen Cargoは、OutSystemsであれば長期的なプラットフォーム戦略をサポートできるだろうと確信しました。「アーキテクチャワークショップは当社の意思決定に重要な役割を果たしました」とPaas氏は言います。「この先長年にわたり当社のデジタル化を支えられる拡張性の高いマイクロサービス 指向のアーキテクチャをOutSystemsで構築する方法を学ぶことができたのです」。
Green Cargoに入社してから3か月で、Paas氏はチームがクラウドでの迅速かつ持続可能なイノベーションを始めるために必要なツールの大部分を用意しました。しかしこれまで開発を外部委託してきたこともあり、社内でアプリケーション開発ができるよう人材を揃える必要がありました。この課題の解決と、最初のいくつかの開発プロジェクトを主導する責任を負うことになったのが、プロジェクトマネージャーのJonna Nilsson氏でした。
「初級開発者の採用で大きな成功を収めました」とNilsson氏は説明します。「紹介予定派遣で新卒者を就業させる人材派遣会社のAcademic Workと提携しました。OutSystemsの無料の自習型トレーニングコースと認定資格試験を利用して、新任の開発者に業務を覚えてもらいました。OutSystemsのIDEには、ガイド、AI支援、アーキテクチャアドバイザリ機能が組み込まれているため、それほど多くの上級開発者は必要ないということがわかりました。開発チームのオンボーディングは、非常にコスト効率よく迅速に実施することができました」。
開発チームは、OutSystemsのカスタマーサクセスチーム、およびOutSystemsのパートナーに所属する2人の上級開発者からのサポートも受けています。
「OutSystemsのカスタマーサクセスチームからアドバイスを受けたことで、アーキテクチャのベストプラクティスを取り入れ、再利用を最大化できるようになりました。これは、今後何年にもわたってGreen Cargoの役に立つでしょう」
「特筆すべき成果のひとつは、非常に拡張性の高いプラットフォーム上で優れたアプリケーションを低コストで開発するという、フルスタックのソフトウェア会社のような業務をこなせるようになったことです」
OutSystemsの導入初年度、Green Cargoの若い開発チームはいくつかの重要なアプリケーションを稼働させて、幸先の良いスタートを切りました。以下は、ハイブリッドクラウドアプリケーション開発に向けてGreen Cargoが身に付けたアジャイル能力の一例です。
このプロジェクトは、車両基地の作業員が貨車の損傷を記録するためのモバイルアプリを用意しようというシンプルな発想から始まりました。しかし見るまに対象範囲が広がり、日常業務の遂行に必要なすべてのものを提供することになりました。
3か月で開発されたこのアプリケーションは、貨車の詳細情報、スケジュールの変更通知、貨車の移動、安全性の確認、準備完了の報告、タグの割り当て、車両損傷の報告という8つのプロセスに対応しています。
このアプリはメインフレームの物流システムおよびSAPシステムの両方と連携して、車両基地の作業員にリアルタイムの情報を提供します。標準的なスマートフォンで実行できるため、陳腐化して信頼性の低いソフトウェアを使用している専用モバイルデバイスを廃止することができました。
このプロジェクトにはもう1つ大きなメリットがありました。レガシーシステムとメインフレームとの連携のために開発したAPIを、後で他のアプリに流用できたという点です。
「リアルタイムでデータを交換できるようになったため、運用の可視性が大幅に向上しました」とPaas氏は言います。「このプロセスのいくつかは複雑で、複数の連携が必要でした。このアプリをリリースしたところ、関係者にとても喜んでもらえました。私たちがこのすばらしいアプリケーションを3か月で開発したことを知ると驚いていました。OutSystemsを使用したことで、開発期間を1年短縮でき、コストも25万ユーロ程度削減できたのではないかと見ています」。
2人の開発者がOutSystemsを使用して3か月で開発したこのアプリを活用することで、Green Cargoはホイールベアリングの稼働中の故障を50%低減させ、列車の運行コストを大幅に削減することに成功しました。
このアプリはGreen Cargoのインフラパートナーのセンサーからリアルタイムでテレメトリを受信して、ブレーキとホイールベアリングの過熱を検出します。その後、予測アルゴリズムを使用してIoTデータを処理し、過熱で故障する前に保守警告をトリガーします。
「稼働中の故障に対処するのではなく、計画的なダウンタイム中に保守を実施できるため、信頼性と運用効率が大幅に向上しています」とPaas氏は言います。
すでにスウェーデンで実運用されている多段階プロジェクトのポータルにより、カスタマーエクスペリエンスも劇的に向上しています。これまで、顧客はメール、テレックス、電話で依頼をしていました。その依頼を、25人のカスタマーサービスチームがほとんど手作業で入力していました。しかも、メインフレームとSAPに同じ内容を入力する必要があったのです。
カスタマーポータルの全面展開に伴い、顧客の依頼はすべてWebポータル経由で入ってくることになるため、改めて入力する必要がなくなります。「ポータルは優れたカスタマーエクスペリエンスをお客様に提供します。また、当社のスタッフもお客様への対応に多くの時間を割けるようになります」Paas氏はそう説明します。「ポータルにより、カスタマーサービスの運用を大きく拡大できるでしょう」。
Green Cargoは、透明性の向上、管理からの解放、決済遅延の回避を実現するため、顧客のERPシステムとの連携も提供し始めました。
引き続き展開を進め、ヨーロッパ全体のインターモーダル輸送、貨物の完全なトラックアンドトレース、リアルタイムの情報、請求処理に対応していく予定です。「リアルタイムの情報が得られるようになったことで、新たなビジネスモデルが実現可能になりました」とPaas氏は言います。「ダイナミックプライシングを導入して貨車の空きスペースを埋めることで、新たな顧客を引き付け、環境への貢献を最大化することもできます」。
「このポータルプロジェクトの代案としては、有名なCRMパッケージの大幅なカスタマイズが挙げられていました」とIngo Paas氏は説明します。「この場合、コストは10~15倍、期間は4~5倍になっていたはずです。OutSystemsを使用することで、CRMベンダーの選択にかかる時間と構成に要する費用でパイロット版を稼働させることができました。CRM製品のライセンスを継続利用していたとしたら、OutSystemsに比べて莫大なコストがかかっていたでしょう」。
今の状況は、Paas氏が18か月前に引き継いだ当時の状況からは想像もつかないものになっています。順調かつ迅速な開発という実績を積み上げたことで、Paas氏の予算は上乗せされ、今年中にIT部門の増員も行われる見込みです。「依頼が殺到しており、今年いっぱいは開発スケジュールが埋まっています」とPaas氏は話します。
「この会社をデジタル化するには、イノベーションと開発を内製化し、ビジネス部門とIT部門の間で効果的なコラボレーションを進める必要がありました」Paas氏はそう言います。「それを可能にする俊敏性を提供してくれたのがOutSystemsです。従来型の開発を行っていたとしたら、5~10年後には新たなレガシーとなってしまっていたでしょう」。
「Green Cargoでは皆、OutSystemsにとても感心しています。勤続年数の長い仲間は、会社のITを改善することは可能だと思っていたものの、ここまでのレベルに到達できるとは思っていなかったようです」
Green Cargoがクラウドプラットフォームを介してイノベーションをリリースするたびに、メインフレームやSAPシステムの廃止は近づいてきています。「最終的にはこうしたレガシーシステムをなくす予定です」とPaas氏は言います。「SAP BIモジュールについては、すでに使用していません。取り組みは段階的に進めています。各ステップは、その意義を問うことから始まります。その答えは、単にITの問題を解決することではなく、ビジネス価値を生み出すことであるべきなのです」。