東京エレクトロン株式会社 - SAPの周辺システム開発にOutSystemsを活用
半導体製造装置およびフラットパネルディスプレイ製造装置の開発、製造、販売を手がける東京エレクトロンは、大規模データの活用促進、データドリブン経営の実現による競争力強化などを目的として、基幹システムを「SAP S/4 HANA」で刷新。刷新に伴う、ビジネスプロセスや業務環境への影響を吸収する「周辺システム」の開発にあたり、ローコード開発ツールである「OutSystems」を採用した。
豊田自動織機はトヨタグループ創始者の豊田佐吉翁が発明した G 型自動織機の製造・販売を目的に、1926 年に設立された企業だ。現在のトヨタグループの源流であり、豊田自動織機自身も繊維機械をはじめ、自動車パーツ、産業車両、エレクトロニクス、物流といった幅広い領域でグローバルに事業を展開する。同社グループの IT システムについて包括的なソリューションを提供しているのが、1991 年に IT 部門が独立する形で設立された豊田自動織機 IT ソリューションズである。(設立時は豊田ハイシステム) 同社では近年の IT システムに対するビジネスニーズの高まりに対応しより価値の高いシステムを迅速かつ柔軟にユーザーへ提供できる体制の確立を目指し、2018 年より OutSystems を導入している。現在では Web アプリケーションの標準的な開発・運用基盤として定着しており、今後さらなる活用レベルの向上を目指すとともに、自社開発アプリケーションの外販展開なども視野に入れる。
「 OutSystems は、システムの開発・運用に携わる人々がユーザーに提供できる価値を増やし、自分たちの仕事にやりがいを感じながら、いきいきと幸せに働くための武器になると思います。開発生産性と成果物の品質を同時に高めデジタル化推進のためのスキルアップやチャレンジのためのリソースを生みだすことで、ひいては IT 産業全体のありかたを旧来の姿から進化させる可能性を持ったツールだと感じています」
課題
豊田自動織機 IT ソリューションズはグループ内にとどまらずそこで培った多様なスキルやノウハウを、グループ外の製造、物流、小売業界の企業にも提供するメーカー系 SIer として事業の領域を拡大している。
「われわれは豊田自動織機グループ唯一の IT 子会社として、ユーザーである親会社に IT ソリューションの提供を行っています。ただユーザーからの指示を単に“下請”としてこなすだけではなく、 IT プロフェッショナルとして常にビジネスを支えるシステムの “あるべき姿”を共に考え提案できるパートナーでありたいと考えています」
そう話すのは株式会社豊田自動織機 IT ソリューションズ 代表取締役社長の鈴木氏だ。鈴木氏は社長就任以前豊田自動織機の情報部門に所属しており、当時より「世の中の IT 環境の変化に対応した SIer のあり方」について課題感を持っていたという。
「長いグループの歴史においてホストコンピューターやオフコンの時代から IT に取り組み、とてもバラエティに富む仕事を手がけてきました。ただ“Industry 4.0 ”や“バイモーダル IT ”、現在であれば“ DX ”(デジタルトランスフォーメーション)といったキーワードが社会での重要性を増す中で、 IT 企業が担う役割にも変化が求められていると感じます。 IT のプロフェッショナルとして持つべきスキルや仕事の進め方に、デジタル化の時代に対応した新しい方法論を取り入れていく必要がありました」
同社では以前国内大手ベンダーが提供するJava ベースのアプリケーションプラットフォームを通じてシステム基盤の設計、構築を標準化し、基盤構築コストの削減を図ってきたが、このプラットフォームがサポート期限を迎えるにあたりより柔軟性や開発生産性に優れた、新たなアプリケーション開発運用基盤の構築に向けた検討を本格化させる。
同社取締役 ビジネスアプリケーションユニット長 の渡辺氏は「新たなプラットフォームとして、“コードジェネレーター”や“超高速開発ツール”を視野に入れて検討する過程で、 OutSystems の存在には特に注目していた」と話す。
「OutSystemsはアプリケーションプラットフォームとして高い柔軟性を備え対応できる案件の幅が非常に広い点が、新たな基盤として有望だと感じました。設計、開発、運用に関わるエンジニアが、環境の準備やコーディングに多くの時間を割くのではなくユーザーとの対話の中から彼らがやりたいこと、困っていることを見つけ出し、それをシステムでどう解決するかを考え出すための時間をより多く確保する上で武器になると判断しました」
ソリューション
OutSystems の導入プロジェクトは、ビジネスアプリケーションユニット アプリケーション開発部 副部長の久野氏を中心に進められた。「アプリケーション開発基盤としてのOutSystems の将来性に大きな魅力を感じていた」と話す久野氏は、まず 9 名ほどで構成される「OutSystems 開発組織」を同社内に立ち上げる。これは後に全社規模で OutSystems 活用を推進および統括する CoE (Center of Excellence) としての役割を果たす組織となる。
いわゆる「旧来型」のシステム開発手法を長年にわたって手がけそのスキルやノウハウを「強み」としてきた組織に、OutSystems によるモデルベースの「ローコード開発」を導入していくにあたり久野氏はいくつかの工夫を行った。
工夫のひとつはOutSystems の「先進性」のみを前面に押し出すのではなく、このツールを使うことで既存システムの運用や改善といった「既存業務の効率化」につながる点を強調したことである。もうひとつは各現場の開発手法やプロセスを新しいものへ急激に変えるのではなく、まずは CoE で OutSystems による「設計」「製造」「テスト」の工程を集約して引き受けノウハウを蓄積していく体制としたことだった。
「まずは CoE を中心にアプリケーションの実行環境をサービスレベル別に提供するシェアード環境を構築し、並行して共通機能、共通部品、共通サービスの整備を進めていきました。当初は従来のプロセスをツールに合わせて変えるというよりも、現状の各工程で OutSystems のメリットを発揮しやすいところから適用を進めるという方針で、改善と効率化を進めていきました。これによって CoE 内に OutSystems そのものの使い方や、われわれの組織の中で OutSystems をうまく使っていくためのノウハウが蓄積され、その後の展開に大いに役立ちました」
結果
久野氏はOutSystems の導入フェーズとして、初年度を「整備期」、2 年目を「適用期」、3 年目以降を「加速期」と位置付け、段階的に活用レベルを高めてきた。
最も早い段階で得られた成果は、アプリケーション開発実行環境の「シェアード化」によるシステム企画からサービス提供までのリードタイムの圧縮だ。従来の基盤では申請から約 1 カ月かかっていた環境払い出しまでの時間が「 2 日~ 1 週間」へと大幅に短縮された。環境整備が迅速化されたことで案件全体の納期短縮、開発コスト 削減にもつながっており、概算で「 30% 前後」の削減効果を生んでいるという。
導入から 5 年が経過した現在では、新規構築の Web アプリケーションについてOutSystems による開発が社内に定着しているという。現時点で開発中のものを含めて 30 を超えるアプリケーションが稼働しており、月間で 200 万 PV を超えて利用される大規模なアプリケーションプラットフォームに育っている。
ビジネスアプリケーションユニット アプリケーション開発部で部長を務める神谷氏は「OutSystems の高い開発生産性や機能の柔軟性、対応できる案件の幅広さ、“Forge” と呼ばれるコミュニティによるエコシステムの使い勝手の良さなどが高く評価されており、特に Web システムの開発においては他の選択肢を検討する必要がない状況になっている」と話す。
現在も、CoE を中心とした共通化可能な独自部品の拡充、リリースされた部品の改善や拡張が進められており、再利用性が上がることによる開発生産性は向上し続けているという。
「今後もOutSystemsの環境整備とノウハウの蓄積が進んでいく中で、開発生産性や案件全体に波及するコストの削減効果はさらに向上していくと見込んでいます」
これらに加えて久野氏は OutSystems の「開発」だけでなく「運用」を視野に入れたアーキテクチャが、さらに多くのメリットをもたらすことを期待していると話す。
また OutSystems には包括的な監査・監視ツールである “Analytics” と呼ばれる機能も標準で用意されている。この機能を活用したアプリケーション利用状況の把握や、パフォーマンス劣化への早期対処および改善なども行っているという。
OutSystems での開発運用が組織に浸透してきている中、今後はさらなるドキュメント類の削減やアジャイル的開発手法の導入などにも挑戦していきたいという。
「ドキュメントレスについては支援ツールを社内で開発するなどして推進を図っていますが、一朝一夕では難しいという現実もあります。ドキュメントレスにしても、アジャイル型の開発手法にしても、大きな効果を出すためには開発側だけでなくユーザー側にも新たな開発・運用スタイルへの理解や適応が必要です。幸いわれわれのユーザーにも “新たなやり方を取り入れて効率を上げ、新しい価値の創出につなげたい” という意識は強いので、機会をみながら段階的に取り組んで行きたいと考えています」(渡辺氏)
豊田自動織機 IT ソリューションズでは、さらにその先を見据えた構想を描き始めている。現在グループ内での案件を中心に利用している OutSystems によるアプリケーションの価値をグループ外の企業にも提供できないかというアイデアだ。
「OutSystems ではユーザーの困りごとを解決するためのアプリケーションを多く作ってきていますが、これらは多くの製造業を営む企業でも役に立つものだと思います。例えば、工場で消費する電力量を一元的に把握して改善するためにはどうしたらいいか、生産現場の安全性を高めるために IT システムがどう役に立てるか、のような課題は世の中のあらゆるところにあるはずです。 “豊田自動織機が使い、洗練してきたシステム” で、そうした課題が解決できるという点に、価値を感じてくれるお客様も多いのではないかと思います」(鈴木氏)
同社では社会全体で増加する「アプリケーション」へのニーズへ、SIer として迅速かつ効率的に応えていくための「切り札」として、OutSystems を活用していきたいと考えている。
「IT組織として、ユーザーのアプリケーションに対する要望に応え続けていくためには“パッケージやサービスの活用で開発そのものを減らす”“市民開発を広げることで組織内に開発リソースを増やす”、そして“開発効率を高め、限られたリソースでより多くのアプリケーションを開発する”という3つの方向性があります。これらは、状況やニーズに応じて並行して進める必要がありますが、OutSystemsは、特に3番目の方向性を追求するにあたって心強い切り札になると感じています。OutSystemsには、今後もユーザーや開発者に寄り添った細やかな対応を期待すると共に、先進の技術を常に取り入れながら、レガシーになることなく進化し続けてくれることを希望します」
【企業情報】
株式会社豊田自動織機
所在地:愛知県刈谷市豊田町2-1
設立:1926年11月18日
資本金:804億円(2022年3月31日現在)
従業員数:7万1,784名(2022年3月31日現在)
URL:https://www.toyota-shokki.co.jp
株式会社豊田自動織機ITソリューションズ
所在地:愛知県刈谷市南桜町1-72-1 アルバックスタワー刈谷駅前アカリア
設立:1991年2月8日
資本金:1億円(2022年4月現在)
従業員数:437名(2022年4月現在)
URL:https://www.tiis.global
【企業プロフィール】
株式会社豊田自動織機
トヨタグループの創始者である豊田佐吉翁が発明した G 型自動織機の製造・販売を目的に、1926 年に設立。その後、繊維機械、自動車(車両、エンジン、カーエアコン用コンプレッサー等)、産業車両、エレクトロニクス、物流へと事業領域を拡大する。フォークリフト、カーエアコン用コンプレッサー、DC-AC インバーター、エアジェット織機の 4 製品は、グローバルで販売シェアトップを誇る。トヨタ源流としての思想を受け継ぎ、ものづくりを通した世界貢献を続けている。
株式会社豊田自動織機ITソリューションズ
豊田自動織機グループ唯一のIT企業であり、同グループのビジネスを支えるシステムについて、企画から、開発・運用まで、一貫してインテグレーションを手がける。情報子会社でありながらも、顧客であるユーザーの課題を汲み取り、主体的に考え、行動することで解決へ導く社風を特色とする。現在は、自動車製造の分野で培ったノウハウを武器に、グループ内にとどまらず、物流・製造・小売といった幅広い業界の企業に向けてソリューションを提供している。