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SAPの周辺システム開発にOutSystemsを活用 システム刷新と現場業務の効率化を短期間で両立

SAPの周辺システムを開発 基幹システム刷新によるプロセスや業務への影響を吸収
開発標準を定め段階的に浸透 開発生産性と保守性を高めながら適用範囲を拡大
DX推進基盤としての活用を検討 業務システムのモバイル対応、先進技術の導入を促進
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半導体製造装置およびフラットパネルディスプレイ製造装置の開発、製造、販売を手がける東京エレクトロンは、大規模データの活用促進、データドリブン経営の実現による競争力強化などを目的として、基幹システムを「SAP S/4 HANA」で刷新。刷新に伴うビジネスプロセスや業務環境への影響を吸収する「周辺システム」の開発にあたり、ローコード開発ツールである「OutSystems」を採用した。開発標準を整備した上で、幅広い業務に対応するアプリケーションを短期間で開発し、業務効率の向上に寄与している。今後DXを視野に入れたモバイル対応、最新技術導入などの基盤としても活用していく計画だ。

  • SAPの拡張
  • アプリの刷新
  • デジタルトランスフォーメーション
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「DXは日々の業務の中に普通に高度で先端的な技術が存在している状態を目指すことだと思います。OutSystemsは、そうした業務環境をわれわれが整備していくにあたって、技術的な核となっていくプロダクトだと捉えています」

柿 良幸 氏 東京エレクトロン株式会社
ITユニット 情報システム部
部長代理
課題

基幹業務システムのSAP移行に伴って生じる
業務への影響を吸収するサブシステムを開発

半導体製造装置およびフラットパネルディスプレイ製造装置の開発、製造、販売を手がける東京エレクトロン(TEL)は、国内でトップシェアを誇るこの分野における世界的リーディングカンパニーの1社である。同社ではビジネスの生産性向上、および大規模データの活用促進などを目的として2021年に基幹業務システムを「SAP S/4 HANA」で刷新した。

TELは1963年に半導体製造装置の技術専門商社として創業し、その後メーカーへと転身した。急速に進化する半導体業界のニーズに対応すべく、自らも事業形態やビジネスプロセスを柔軟に変化させてきた。約60年にわたる歴史の中で各事業部やグループ企業は、それぞれに独自の創意工夫で成長してきたという経緯もあり、それぞれの業務やシステムは個別最適化が進んでいたという。

「この先、グローバルでの事業拡大などを考えた時、世界的なトップ企業が行っているようなデータドリブンな経営判断が必要だという課題意識が経営陣にあったと思います。しかし自分たちはシステム面で遅れをとっている。そこでシステムの個別最適化された状態を解消し全体最適の観点でビジネスプロセスやデータを統合できる新たなシステム基盤を作りたいという思いから、基幹系のSAPによる刷新がスタートしていました」

そう話すのは、TELのITユニット情報システム部で部長代理を務める柿良幸氏だ。ただこのプロジェクトは当初かなり難航していたという。“遅れているシステムを何とかしたい”というニーズが起点だったため、開始時点ではシステムの刷新に合わせて既存のビジネスプロセスや業務も変えていくという視点に欠けていたことがその理由として挙げられる。プロジェクトを進める中で少しずつ業務そのものを見直しながら“パッケージに合わせる”部分と、どうしても合わせることが難しいため“カスタマイズする”部分とを整理して考えられるようになったことでシステム刷新が具体性を帯びてくる。

「SAPはたしかに良くできたパッケージですが、どんなユーザーにとっても完璧な製品というわけではありません。機能性の高さと、それがユーザーにとって使いやすいものかどうかというのは別の話です。SAP自体にも得意な部分とあまり得意ではない部分があって、あまり得意ではない部分を無理して実現しようとすると開発にも運用にも余計な手間がかかります。それはできる限り避けたかったのです」

柿 良幸 氏 東京エレクトロン株式会社
ITユニット 情報システム部
部長代理

同社ではSAPの導入によって生じるビジネスプロセスや業務への影響を吸収するための「周辺システム」の整備が必要だと考えた。この整備作業において必要なシステムを開発するツールとして導入されたのが「OutSystems」だ。

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OutSystemsを選択した理由
  • IT/ビジネス部門間のコラボレーション
  • 制限のないフルスタックのビジュアル開発
  • コアシステムの開発
ソリューション

PoC、開発標準策定を経て開発範囲を拡大
部門ごとに必要なシステムを短期で実現

同社ではSAPの周辺システムを作るためのツールを探す中で複数のローコード、ノーコード開発ツールを比較検討した。OutSystems選択の理由として挙げられるのは「開発自由度の高さ」「機能性、使い勝手の良さ」、そして「コスト感」だという。

「最初SAPのデータからレポートを出力する部分を独自に作ることを念頭に複数のツールを比較検討しました。OutSystemsを選んだ大きな理由のひとつは“自由度の高さ”です。“ローコード”と呼ばれるツールの多くは開発の容易さと引き換えに作れる機能やデプロイなどの面で何らかの制約があることが多いのですが、OutSystemsについては自由度が非常に高く導入コストとのバランスが良いと感じました」

樋 健士氏 東京エレクトロン株式会社
ITユニット 情報システム部
部長代理

同社ではまずOutSystemsによるPoC(実証実験)として「SAPデータのレポート機能」と「データグリッドによる表計算ソフトライクな検索画面」から開発をスタートした。

「OutSystemsの最大の強みはシステムに詳しくない人に対して“こういうものです”と動くものを見せ、理解してもらうまでのスピードが恐ろしく速いことです。まずはPoCとして社内の人たちにOutSystemsで作ったものを見せ、これでどのようなことができるのかを理解してもらうことがこの先周辺システムを整備していく上での近道になると考えました」(樋氏)

PoCの結果が良好だったことを受け同社では開発パートナーである電通国際情報サービス(ISID)と共に、OutSystemsによる周辺システムの作成を本格的に開始する。レポート機能、ワークフローシステムなどを皮切りに開発を進めながら、並行して「開発標準」の整備も行っていった。この開発標準は各事業や各部門向けにSAPと連携する周辺システムをOutSystemsで作る場合の共通ルールとなるものであり、生産性と保守性を高める上で重要なものだ。

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「当時の社内にはSAPへの移行に合わせて、何らかの周辺システムを作らなければならないことは分かっているが、まだ具体的に着手できていないケースというのがいくつかありました。具体的な移行スケジュールが見えてくるにつれ、“もう時間がないがどうしよう”という状況も出てきていた。そういったところにOutSystemsを検討したメンバーから、情報システム部内外を含む他のメンバーにOutSystemsで既に作ったアプリケーションを見せて“これなら、SAPとの連携部分については既に標準化ができているから、そこには時間を割かずに、自分たちが使いやすい画面デザインだけ一緒に考えてくれれば、すぐに作れる”と説明して回り、対象の部門や業務を広げてきました」

柿 良幸 氏 東京エレクトロン株式会社
ITユニット 情報システム部
部長代理
結果

基幹システム移行後の業務検討効率化に寄与
DX推進の技術基盤としての活用を検討

こうした過程を経てOutSystemsによるSAP周辺システムの開発は次第に加速し、2020年3月には共通機能の開発を完了。開発対象のシステムをさらに拡大していった。PoC、開発標準の策定からここまで約半年という短期間で到達している。

TELでOutSystemsによる開発に携わったエンジニアは「開発生産性の高さ」と「学習コストの低さ」が開発期間の短縮に貢献していると指摘する。

「OutSystemsでシステムを作ってみた時、これまでの開発手法とは、効率が全く違うと感じました。以前、従業員管理のシステムを作った経験があったので、同じ機能、同じUIを、どの程度の期間で作れるか試してみたのですが、圧倒的に短時間でできることが分かり、そこがOutSystemsの強みなのだろうと感じました。OutSystems自体の使い方についても、自分は1週間程度学んだだけでした。ビジュアルな環境で、処理の流れと画面が作れますし、自分はもともとC#で開発を行っていたので、そのスキルと組み合わせて使うことも容易でした。OutSystemsを使い始めるにあたり、こうした学習コストの低さもメリットだと感じます」

福島 直哉氏 東京エレクトロン株式会社
ITユニット 情報システム部

現場において業務効率の向上に寄与するアプリケーションが、OutSystemsによって多数開発されている。その例のひとつが「伝票申請Web」と呼ばれるものだ。これはSAPのFI(財務会計)モジュールにデータを入力する際のフロントエンドである。現場のユーザーが入力したデータはこのフロントエンドからワークフローに乗り、承認を経た後でSAPへ自動的に登録される。

「SAPの標準UIでは、“どこにお金を払う”というシンプルな処理を行いたい場合でも、現場のユーザーが何画面も遷移しながら、ひとつひとつ、必要な項目を入力してく必要があります。また承認ワークフローの仕組みも簡単に用意することはできません。OutSystemsで作った“伝票申請Web”では、必要な情報をひとつの画面に入力すれば、決済権限に応じた承認ワークフローからSAPへの登録までの一連の処理が自動的に行われます。これは、支払いや発注など、伝票入力作業に携わるすべての人たちの業務効率の改善に大きく貢献しています」(柿氏)

「OutSystemsの開発スピードの速さと、機能やUI変更にあたっての自由度の高さを高く評価しています。伝票申請Webのリリース後も、システムを実際に利用しているユーザーから“こういうふうに機能を変更したい”とか“こういうデータを取り込んで表示できないか”といった要望が多く出てきていますが、そうしたニーズへの対応も迅速に行えています」

東原 広子氏 東京エレクトロン株式会社
ITユニット 情報システム部
グループリーダー

PoCから、開発標準の整備、実際のアプリケーション開発といった過程を通じて、TELには徐々に開発環境としての「OutSystems」が根付きつつあるという。今後も、ビジネス環境や業務、ユーザーニーズの変化に応じたアプリケーションの開発改善の基盤として、活用領域を広げていきたいとしている。

「現在のトレンドで言えば“デジタルトランスフォーメーション”(DX)もわれわれが取り組むべき課題のひとつです。個人的な考えですがDXは“デジタル技術”を何か特別なものとして仰々しく扱うのではなく、日々の業務の中で普通に高度で先端的な技術、それは例えばAIや機械学習のようなものかもしれませんが、それらが存在している状態を目指すことだと思います。その準備として、既にOutSystemsでモバイル対応の基盤を作りはじめており今後リリースしていきます。これによってこれまでに作ってきた周辺システムや、今後開発する先進的なシステムがそのままモバイルデバイスから扱えるようになります。これは、従業員が時間や場所に縛られない働き方をするための基盤なっていきます。OutSystemsはそうした新しい業務環境をわれわれが整備していくにあたって、技術的な核となっていくプロダクトだと捉えています」(柿氏)

登録商標について

SAP、SAP S/4HANA、および本文書に記載されたその他のSAP製品、サービス、ならびにそれぞれのロゴは、ドイツおよびその他の国々におけるSAP SEの商標または登録商標です。

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【企業情報】

東京エレクトロン株式会社
所在地:東京都港区赤坂5-3-1 赤坂Bizタワー
設立:1963年11月11日
資本金:549億6,119万円
従業員数:1,821名(単独)、1万5,883名(連結)
※2022年4月1日現在

【企業プロフィール】

半導体の製造装置、フラットパネルディスプレイ製造装置の開発、製造、販売を行う。日本国内において、この分野でトップシェアを持つ企業であり、2022年3月期の連結売上高は2兆38億円に達する。高性能な半導体の、大量かつ安定した供給へのニーズが高まる中、製造装置メーカーとしての技術革新にも意欲的に投資を行っている。

URL: https://www.tel.co.jp

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