ソフトウェア開発は、生成AIのユースケースとして現在最も多い部類に入ります。Githubが2023年7月に行った調査によると、米国の大企業で働く開発者500人のうち92%が業務でのコーディングに生成AIを使用しています。回答者は、これらのツールが単調な日常タスクをなくし、スキルアップの機会をもたらし、パフォーマンス、コーディング、コラボレーションの向上につながっていると語っています19。世界的には、2023年末時点でエンタープライズソフトウェアエンジニア全体の5%が生成AIを使用しているものと推定されますが、この数はさらに増える可能性があります20。
こうした事実は、生成AI時代のアプリ開発が今後どうなるかについて様々な推測を呼んでいます。このセクションでは最も可能性の高いシナリオを紹介します。今後のアプリケーション開発方法や開発者像を考える際の参考にしてください。
「今後、専門職はさらに高度なものになり、戦略的な側面が強まっていくでしょう。ただ、コードの精密さが求められる領域では、手作業でのコーディングが必要になります」
—OutSystems Founder and Chairman of the Board Paulo Rosado
生成AIはITリーダーのアプリケーション開発へのアプローチをどう変えるか
生成AIは、コーディング、テスト、最適化の自動化により、すでにソフトウェア開発とデプロイを高速化しつつあります。生成AIツールが増えるにつれ、ITへの影響もますます大きくなっていきます。IT組織におけるアプリケーション開発も、間違いなく変わっていくでしょう。たとえば以下のような変化が見込まれています。
スキルセットの変化
生成AIによって多くのコーディングタスクが自動化されるため、開発者が高度な戦略的作業に関わるようになります。この自動化によって、非常に大規模なシステムのアーキテクトや設計者の役割を開発者が担うようになる可能性があります。開発者がビジネス価値の提供を加速させたり、高度な意思決定を下したりすることも可能になるでしょう。
同時に、ITプロフェッショナルにはAIと機械翻訳のスキルを身につけ、こうしたツールの効率的な使用や実装の監視を行えるようになることも求められます。大半の作業はコンピュータが行うものの、アウトプットを読み取り、理解して、調整と変更を加える力が重要になってくるからです。
「従来のコードに生成AIツールを使用する場合、引き続き専門知識が必要です」
—OutSystems 共同創設者兼AIプロダクトマネージャー Rodrigo Coutinho
組織構造の変化
アプリケーション開発の効率化と高速化は、ITチームの構造を変えます。部門を越えたコラボレーションに重点が置かれ、AIスペシャリストが各分野のエキスパートやビジネス部門のステークホルダーと緊密に連携を取るようになります。これにより、ユーザーに価値を提供することを重要視する、ビジネスを中心に据えたコラボレーティブなITアプローチが進みます。同時に、特にビジネス部門による生成AIツールの利用を監督して適切な利用を徹底するために、一元的なガバナンス体制を構築する必要も出てきます。
俊敏性とイテレーションの重要度の高まり
新しい生成AIの世界は、ITチームに今まで以上の俊敏性とイテレーションを求めてくるでしょう。アイデアのプロトタイプ作成やテストをすばやく実行できるようになるため、継続的な改善・イノベーションをさらに重視した、より実験的な開発アプローチが採用されるようにもなるはずです。
自動化の管理
反復的で時間のかかるタスクの多くを生成AIが引き継ぐことで、IT組織の自動化が想定以上に進みます。自動化によって空いたリソースを戦略的イニシアチブやイノベーションに割り当てることが可能になる一方、チームメンバーの再教育やスキルアップが必要になる可能性があります。
継続的な学習と改善
IT組織は生成AIに取り残されないよう、学習、導入、改善を続ける必要があります。ITリーダーは生成AIの進化に関する最新情報を定期的に把握し、チームに継続的なトレーニングや開発の機会を提供する必要があります。また、生成AIのコードやコンテンツのアウトプットの改善を継続的かつ積極的に行うことも欠かせません。
継続的な改善のためのヒント
- ソースとなる素材を提供することで信頼性が向上します
- 高評価・低評価のフィードバックを集めると、アプリの改善に役立ちます
- 人間によるスポットチェックを行います
ITにおける倫理
IT組織は、法律という範疇にとどまらず、生成AIの利用に伴う倫理的な考慮事項にも対処することになります。責任あるAIの開発とデプロイ、そしてこうしたツールを使用する際の透明性やアカウンタビリティの確保に向けたガイドラインや原則を整備しておきましょう。
さらに重要なことがあります。アプリケーション開発やSDLCに生成AIを活用するにあたって、ITリーダーは多くの事柄を検討する必要があるのです。まず、従来のコードがどのような運命をたどるかを見ていきましょう。
生成AIと従来のコード
生成AIにより、ライター、デザイナー、ビデオグラファー、アニメーター、アーティストでなくても、簡単なプロンプトで印象深い作品を制作することが可能になります。一方、開発者にとっても、大量のコードでトレーニングされている生成AIモデルを利用するのは当然のことと言えるでしょう。不確かな未来の話ではなく、この変化はすでに進行中のものです。
自然言語によるアプリケーション開発
自然言語がコーディングの複雑な構文を一般的な英語やその他の言語に置き換えていくのも、時間の問題です。生成AIプロンプトとAIオートメーションの組み合わせが、リアルタイムフィードバックループ、直感的なアシスタンス、自己修復機能を持つSDLC管理に取って代わり、信頼性や業務効率を向上させます。
こうした中、コーディング全般はどうなっていくのでしょう。先行きは不安定な状況です。最近のInfoWorldの記事では、IDEはアセンブリプラットフォーム化し、開発者はカスタムコードを一から作成するのではなく、ビルド済みのコンポーネントの統合を中心に行うようになると予測されています21。
フルビジュアル開発の台頭
生成AIで完全なアプリケーションや大量のアプリケーションを生成できる可能性が高まるにつれ、人間がそれを理解できるようリバースエンジニアリングをする必要が生じてきます。その結果、生成されたコードを説明するためのツールが遠からず登場するでしょう。この頃には、コードはもはや会話の一部とも呼べないものになり、インターフェイス内に埋め込まれているはずです。
「コードの記述は消えつつあります」
—OutSystems Founder and Chairman of the Board、Paulo Rosado
19 「Survey reveals AI’s impact on the developer experience」 Github、2023年
20 Lucas Mearian 「Here’s why half of developers will soon use AI-augmented software」 Computerworld、2023年12月6日
21 Isaac Sacolick 「10 ways generative AI will transform software development」 Infoworld、2024年2月12日